―MayaからRhinocerosへ、CS-FEMの現状と展望―

概 要

 Maya(オートデスク社)は、一般的な3次元モデリング・ツールではなく、時間軸をパラメータに標準搭載した4次元ツールといえます。もっぱら、ハリウッド映画の映像制作の場で活躍しているツールです。映画「マトリックス」(1999年、アメリカ)などのSF映像で、このツールが活躍しています。複雑な曲面を制御して人の豊かな表情をつくり、重力や流体力学を用いて迫りくる洪水や崩れ落ちるビルを作ります。粘土のように自由自在に操作できるMayaは、空間思考ツールとして有効なため、海外のデザイン企業、建築設計分野の事務所や教育でも利用が盛んです。最近では、ロボットを操作する際の指令を行うツールとしても、Mayaが脚光を浴びています。映画のキャラクターを自在に動かす技術をすでに確立していたMayaにとっては、ロボットを制御することも容易ということです。ロンドンのAAスクール、ニューヨークのコロンビア大学、ロサンジェルスのサイアークなど一部の、先端デザインを取り上げる建築大学では、Mayaを形態操作学習の授業に取り入れています。そのため、ノーマン・フォスター事務所をはじめとする先端技術を駆使した建築を常に創造している設計事務所やS.O.M.やK.P.F.といったアメリカ大手設計事務所のスタッフには、Mayaをコンセプト思考ツールとして使っている方々がいます。

私が、これらの人々のために開発したのが、Mayaの中で構造解析が行えるプラグイン「CS-FEM」です。Maya上のメッシュオブジェクトに、荷重や材質を与えることで物体の構造的な特性や弱点を簡単に知ることができます。Mayaを使うことのできる方であれば簡単な構造の基礎知識を覚えるだけで解析操作を行うことができます。ゆえにMayaが普及している欧米諸国の大学や企業では「CS-FEM」の導入は自然なものでした。

FEM(有限要素法)とは構造解析の手法のひとつです。複雑な形状を持つ構造物の解析は非常に困難ですが、それをメッシュ状にして、形状的に単純な要素で構成するものと見なし、解析できるようにした手法です。これは1950年代、航空機開発の機体構造解析のために開発された手法で、後に宇宙ロケット開発、船舶や土木建築構造の解析に広がりました。近年、FEM解析プログラムは数多く開発されていますが、殆ど構造専門家向けのもので、構造解析の専門的知識を有する者しか使えません。そこで株式会社シーエスと共同し、構造解析専門的知識を持っていなくとも解析を行えるCS-FEMを開発しました。

BIM先進国とは言い難い日本においては、Mayaはあくまで映像制作ツールであり、建築設計の思考ツールとして捉えているのは、ごく数社です。韓国やベトナムといったアジアの国々では欧米に習った先端的ツールの導入に熱心です。このような国際的な状況に対し、また国内の建築の諸問題に対しても、設計者によりよい環境を与える必要が急務であります。市場を鑑み、今後はMayaだけなく、建築分野で普及したRhinocerosなどをプラットホームとしたプラグインとして、新たな「CS-FEM」の開発を展望としています。

 

CS-FEMの基本的な役割

(1)設計事務所1

 
ライザー&ウメモト設計事務所。80mスパン木造ブリッジの形状の検討。
(左)設計競技提出案 (右)CS-FEMによる木造ブリッジの応力分布と変位の視覚化

 

(2)設計事務所2

 
サブディブ設計事務所。中国湖南省ウォーターフロント設計競技。
(左)設計競技提出案 (右)図書館の外殻を自立させるためのCS-FEM解析

 

(3)大学研究

  
コロンビア大学大学院建築学科。流体力学プログラムによる粒子の流れと空間の研究
(左)流体により形成された空間 (右)CS-FEMによる空間構造の応力分布

 

CS-FEM導入実績
アメリカ

コロンビア大学大学院建築学科、ニューヨーク
プラット・インスティチュート、ニューヨーク
南カルフォルニア建築大学(SCI-Arc)、ロサンジェルス
アリゾナ大学建築学科、アリゾナ
オハイオ州立大学建築学科、オハイオ
ほか、建築意匠設計を主とするアメリカの設計事務所 5社

ヨーロッパ

アーキテクチュラル・アソシエーション(AA スクール)、ロンドン、イギリス
Institut für Architektur und Medien、グラーツ、オーストリア
カッセル大学建築学科、カッセル、ドイツ
RWTH Aachen University、アーヘン、ドイツ

日本

東京大学新領域創成科学研究科
日本大学短期大学部建設学科
東京工芸大学建築学科
株式会社伊東豊雄建築設計事務所

 

これまでのCS-FEMの活動

(1)CS-FEM講義、(2)CS-FEMカンファレンス、(3)Maya講習の3つの活動を行っております。

(1) CS-FEM講義

講師:アーキコンプレックス代表 廣瀬大祐

海外や国内の大学や企業にて、構造解析の面白さやCS-FEM操作方法、構造計算の基礎を講義しています。

 

 

 

 

 

 
AAスクールでの3日間のワークショップの様子(2005年3月)


カッセル大学での実演の様子(2005年3月)

 
コロンビア大学での講義の様子(2004年10月)


ペンシルバニア大学での講義の様子(2004年10月)


プラット・インスティチュートでの講義の様子(2004年10月)

 

(2) CS-FEMカンファレンス

CS-FEMの開発から半年後の2005年3月に東京渋谷にて第1回の会議を開催しました。

開催時ポスター

 
会議の様子(渋谷)講師(左)廣瀬大祐 (右)コロンビア大学ピーター・マカーピア教授

 

2006年3月に東京渋谷にて第2回の会議を開催しました。

出席者

神田 順 教授         (東京大学新領域)
ピーター・マカーピア教授(コロンビア大学)
廣瀬大祐               (アーキコンプレックス)
ほか

 

会場の様子

  
(左)ピーター・マカーピア教授 (右)神田順教授

 

(3) Maya講習

日本国内においては、Mayaの効率性、自由度、可能性を伝えることが不可欠であると考え、Mayaの裾野を広げる活動として、不定期ですがMaya講習を行っております。


講習の様子

 

これまでの参加者の皆様

日本大学工学部建築学科
東京理科大学工学部建築学科
武蔵野美術大学造形学部建築学科
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻
東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻
東京大学
早稲田大学理工学部建築学科     の学生の皆様(参加順)

 


受講者の方々の作品。2日間連続の講義でMayaアニメーションを製作できる技術まで細やかに解説します。

 

 

お問い合わせ先:oumi@archicomplex.com