Green Ray

– 緑の長屋 –

台湾島の中央に位置する台中は首都台北に比べると人々も街も穏やかで、自然も豊かなとても居心地がいい地域です。おじいさんおばあさんは、礼儀正しい日本語で話しかけてくれます。波乱の歴史から芽生えた台湾らしさの創造に意識のある若者も多く、路地や公園をいつも賑やかにしています。

中心部に治安の悪いエリアがあり、公務員社宅であった長屋も廃墟化していました。日本統治化時代に建造された組積造2階建てのその長屋一帯(全長80m 奥行15m)は、いわゆるBOT方式の開発を模索されていました。私は直感的に、分節された長屋同士をゆるやかに結び、路地空間を回遊しながらアートと文化に出会える施設に生まれ変われるのではないかと感じました。これに地元の若手デベロッパーが賛同してくださり、Green Rayがスタートしたのです。

廃墟化した長屋には、残したい魅力が多く存在しました。壁に絡まり強く育つ木々、丁寧に張られた内装のタイル、長屋同士のスキマ。もちろん既存図面はないので測量から始めましたが、残す部分や撤去する部分を明確に把握し共有するために、BIMへの既存建築の入力を行いました。テナント入居希望者や近隣関係者には、設計に連動して瞬時に空間が視覚化されるプレゼンテーションを開催し、施工スタッフやインテリアデザイナーへもBIMデータを共有し、概要から細かな指示までヴァーチャル内の既存建築を活用しました。

コンセプトである路地とは、新設の2階部分デッキが主にその役割を果たします。デッキは歩道だけの細い部分や膨らみ空間が有機的に連続します。デッキとは異なる動線ルールを1階フロアに持たせたり、デッキから既存長屋2階フロアに直接入れる仕掛けは、訪れた人々に迷路のような体験を与えます。Green RayはSNSでたちまち拡散され、台中の若者の人気デートスポットへと急変したことで、エリア自体の治安が改善し、近隣にも出店が増え、周辺地価も数倍に上昇しました。台中市政府からは、最も都市生活空間が向上した建築として認定されました。